一針に込められた想い

弘前市立博物館で開催中の「KOGIN 暮らしに息づく美の世界」










ロビーに展示された巨大なこぎん刺し
この二つだけ撮影可でした






遮光器土偶を中心に
色々なパターンがパッチワーク状に
可能な範囲でパターンごとに写してみました























伝統的な藍染の布に白の色の糸
とにかく大きくて圧倒されます


こちらはこの2パターンの図柄が
大きな菱形を描いています









よりアップで







今回の記念スタンプもいいですね
(↑ただのハンコ好き?)


伝統あるこぎんをアレンジした現代のデザイン
カラフルな布に色とりどりの糸を使っていて
それはそれで素敵なんですけど
私はどちらかと言うと
あまりカラフルなものは好みではなくて
紺以外の布でもいいのですが
糸は一色のほうがこぎんらしくて好きです


現代の作家さんたちももちろん素晴しいのですが
それはとても綺麗で芸術作品のよう
「暮らしに息づく」と展示会のタイトルにあるのは
やはり衣服として使われていた時代のこぎん
詳しくは知らないのですが、おそらく大正時代くらいまででしょうか


今回の展示では、古作といわれる時代のこぎんと
現代のこぎんの両方が展示されていたのですが
この二つは同じこぎんであっても全く別のものに見えました





私が衣服として使われていた時代のこぎんを
生で見たのは割と最近です、2年くらい前でしょうか
東京の美術館に展示してありました


日本の有名な美術品が並ぶ中にこぎんがあって
正直、何でここにこぎん?と驚きました
ガラスケースの向こう、ライトに照らされ
美術品と並べて展示されているこぎんを誇らしく思いました




その後、県美で展示されていた古いこぎんの衣類を間近で見たときは
ガツンと殴られたくらいショックでした


衣類として使われていたということを全く理解していなかったから


現代のこぎんは一目が2ミリくらいありそうな
厚ぼったい布に刺していくのが一般的
衣類に使っていた時代は、当然衣類に加工できる薄さの布
向こうが透けて見えるような細い糸で織られた布に
刺し子を施してあって、どれだけ気が遠くなる作業なのか
それより、こんな蚊帳みたいな布、刺し子なしじゃ
冬の寒さがしのげるわけがないというか
何枚重ねたって、麻布がホカホカ暖かいわけもなく
本当に寒かっただろうな、その時はそう思いました


今回の展示に、昔のこぎん作りの手記がありました


農民には麻しか着用が許されなかった時代
しかも、その麻は自前で植えたものを加工したものだけ
種をまくところから始まる衣類としてのこぎん作り
一見、細かい刺し子を施すことの大変さに注目しがちですが
全体の作業からすれば、刺し子の労力は10分の1程度にすぎない


春に種をまき、夏に収穫
硬い茎を糸にするために、川で水にさらし
蒸篭で蒸し、皮をはいで繊維だけを取り出し
糸が出来上がるのは冬のはじめ
布が織りあがる頃には年が明け
できた布はまだ硬いので、さらに洗いにかけ
やっと衣類として加工することができる
布はとても貴重なものだった


こぎんは貴重な布を丈夫にし
長く大切に使うための北国の知恵




美しいこぎんが刺せるということは
自分を美しくすること
よいところから嫁もらいの話がくること
立派なこぎんが出来上がることは
娘たちにとって誇らしいこと
この上もない喜びだった





着物の背一面に刺されたこぎんを身に付けている
お年頃らしき、清楚な娘さんたちの写真は
とても誇らしげに見えました
あれほど細かい刺し子の作業は
さぞ辛いものだったのだろうと思っていましたが
それは衣類が簡単に手に入る現代人の思い違いなんでしょうね




一目一目の積み重ねが美しい模様を描いたとき
そこに喜びを感じるのは、今も昔も同じ
ただ、一針に込められた思いの深さは全く違うものですね





展示会は6月3日まで
休館日は月曜日ですが
さくらまつり期間中の4/23と4/30は開館
4月18日追記↓↓↓
まつり期間が延長されたので、開館日に5/7が追加されました


津軽の風土と暮らしに触れてみませんか
入館料はたったの280円(←しつこい?)